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スモールイズビューティフル、宮本常一、Agileに共通すること

作者のE.F.シュマッハーは、石炭産業に長年籍を置き、その中で化石燃料を使って発展し続ける現代工業文明への批判として本書を書いた。 1973年に出版された本書は世界的ベストセラーになり、「Small is beautilful」はとても有名なキーワードになっている。 37signalsの代表であるJason Friedが発表した Small is beautiful for Web 2.0 start-ups [1] は一時期業界でも話題になったはずだ。

実はこの「スモール イズ ビューティフル」には副題がある。原文では「A study of Economics as if People Mattered」、邦訳では「人間中心の経済学」となっている。この「〜 as if People Mattered」というフレーズは、「Project as if people mattered」に置き換えてTRICHORDの副題にしたかったくらい。意味としては仮定法的な意味になってしまうので使うのをやめたけど。

本書は4部構成になっており、第一部は現代世界(主に経済)、第二部は資源、第三部は第三世界、第四部は企業組織について触れている。どの章もとても示唆に富んでおり、30年以上前の本と思えないほど先進的である。むしろ30年たってもまったく改善しない今の世界を憂うべきだろうか。

閑話休題。

シュマッハーは第五章、 人間の顔をもった技術 で次のように述べている。

技術のおかげで、ある種の仕事が大幅に減るのはたしかであるが、別の種類の仕事は増える。
現代技術によって減ったり、不要になったりした仕事というのは、いろいろな材料に人が
手を触れて行なう種類の、技能的・生産的な仕事である
そして、現代技術は、人間が楽しんでする仕事、頭と手を使っての創造的で有益な仕事を奪い、
代りにみんながいやがるコマ切れの仕事をたくさん作り出したといってよい。

この話が現代技術がもたらした大量生産に対する批判であるが、そのままソフトウェアにもあてはまる。

そして、シュマッハーは次のような新しい技術を提案する。

つまりは現在の技術とは別の技術であり、人間の顔をもった技術である。
この技術によって頭と手は無用の長物とならずに、今までになかったほど生産的になる。
大衆による生産においては、だれもがもっている尊い資源、すなわちよく働く頭と器用な手が活用され、これを第一級の道具が助ける。

このような技術を、シュマッハーは 中間技術 (Intermediate Technology)と名付けた。中間技術を創りあげるには、技術にシンプルにすることでもある。複雑なものをシンプルにするには、シンプルなものを複雑にするよりも遥かに難しい。ソフトウェアの世界でもよくあるのではないだろうか、複雑なフレームワーク、複雑なプロセス、

そして5章の最後にこのような一文がある。

私は技術の発展に新しい方向を与え、技術を人間の真の必要物に立ち返らせることができると信じている。
それは人間の背丈に合わせる方向でもある。人間は小さいものである。だからこそ、小さいことはすばらしいのである。

この文を読んだときに、これがAgileと呼ばれているものの根底にあるのではないかと感じた。

最後に本書の最後で、キリスト教の4つの基本道徳、知恵、正義、勇気、節制を現実的な教えとして紹介し、「善を実行するには、現実をよく知ることが先決だ」と述べている。そしてそれが 知恵 であるとも言っている。つまり善(=理想)を実現するためには、理想をふりかざすだけでは駄目で、現実をよく見て、知り、その上で善を目指していくということではないだろうか。そしてそのように振る舞うことこそが 知恵 と言えるのではないだろうか。

善を行なうには、われわれの行動が現実の状況、すなわち具体的な人間行動のための
「環境」をなす具体的な現実に適合していること、しかもわれわれがこの具体的な現実を
偏見のない客観性をもって真剣に受けとることが前提となる。

これをソフトウェアの世界にあてはめると、ソフトウェアが複雑であること、ソフトウェアを開発する人とコミュニケーションが重要であるということ、銀の弾丸は存在しないということ、これらの現実を客観的に受けとめて、その上で善を目指していくことが必要であると考えることができる。そしてこの思想がAgileの根底に流れていると感じるのだ。

[1]: http://news.com.com/Small+is+beautiful+for+Web+2.0+start-ups/2100-1012_3-6035062.html?tag=st.num